
サルコペニア
サルコペニア
サルコペニアとは、筋肉量の減少に伴い筋力や身体機能が低下している状態を指す言葉で、ギリシャ語の“サルコ(sarco):筋肉”と“ペニア(penia):喪失”を合わせた造語です。
65歳以上の高齢者においてサルコペニアの有病率は男女ともに20%程度で、加齢に伴いその割合は増加すると報告されています。
重症化すると転倒や骨折のリスクが高まり、脆弱性骨折をきたす方ではサルコペニアの有病率は高く、大腿骨近位部骨折では47.3%、椎体骨折では48.5%と報告されています。骨折により移動(歩行)能力が低下することで自立性の消失につながり、さらには要介護・要支援状態に陥る可能性があります。
サルコペニアには様々な因子の加齢性変化が関与しており、それによる筋タンパクの同化抵抗性(筋肉が作られにくい状態)が原因と考えられています。身体活動性の低下、運動頻度の減少、慢性炎症、ホルモンバランスの変化などにより、筋タンパクの合成が抑制され、分解が促進されることで骨格筋量が減少しやすい状態になると考えられます。
アジアのサルコペニアワーキンググループ(AWGS:Asian Working Group for Sarcopenia)が報告した診断基準では、骨格筋量、筋力、身体機能を指標としサルコペニアを判定します。骨格筋量の減少を認め、筋力と身体機能のいずれか一方が低下している場合にサルコペニアと判定し、すべての項目が低下している場合は重度サルコペニアと判定します。
当院ではX線骨密度測定装置としてGE HealthCare社のPRODIGY Fugaを導入しており、骨密度だけでなく脂肪量、非脂肪量、さらにサルコペニアの診断に必要な骨格筋量指数(SMI:skeletal muscle mass index)も測定可能なので、サルコペニアと骨密度の評価を同時に行うことが可能です。
日本人の高齢者を対象とした調査では、サルコペニアと診断された方はそうでない人と比較し1.81倍転倒しやすいと報告されています。また65歳以上の方では3人に1人は年間に1回以上転倒することがわかっています。転倒に伴い発生の危険性が高まるのが骨折であり、骨折により手術加療を必要とする場合もありますので、転倒を予防することが重要です。
サルコペニア対策として運動療法と栄養療法が基本となります。
レジスタンス運動、いわゆる「筋トレ」が重要です。加齢に伴う筋肉量の減少は40歳頃から始まり、40~45歳から75~79歳までの35年間で男性では約11%、女性では約6%の四肢筋肉量が減少すると報告されています。若いうちから予防することも重要ですが、高齢者でも適切な方法で運動を行うことで、骨格筋量および筋力増強効果が期待できます。
アメリカスポーツ医学会の指針では高齢者のレジスタンス運動は、頻度は少なくとも週に2回、強度は初心者の方は低強度、徐々に中〜高強度に移行、ウエイトマシンあるいは自重負荷トレーニングで大筋群を8~12回、1~3セットと推奨されています。
当院ではスポーツトレーナーがサポートし、安全かつ丁寧な指導でサルコペニア予防のお手伝いをします。
サルコペニア予防、改善を考える上で運動は不可欠な要素であり、この運動の効果をサポートするのが栄養と考えられます。
栄養療法としては、アミノ酸やビタミンDといった栄養素は筋の同化作用を高めるうえで重要と考えられています。このような栄養素は単独摂取でもサルコペニア予防、改善に効果的と報告されていますが、運動と組み合わせるとさらに効果が高まることが確認されています。
当院では管理栄養士も在籍していますので、栄養指導や食事内容でわからないことがあればお気軽にご相談ください。
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